楽器と楽譜について

和楽一筋が対応している和楽器の楽譜について解説します。

尺八(琴古流・都山流)
篠笛(横書き数字譜)
三味線(文化譜・家庭式譜・研精会譜・青柳譜)
箏(家庭式譜)
大正琴(横書き数字譜)
沖縄三線(工工四)
和太鼓(西洋譜)

尺八

尺八の楽譜は、片仮名を用いて音を表します。
そのため、ロツレチ譜とも呼ばれています。
また、尺八の楽譜は縦書きです。
和楽一筋では、編集中は横書きで表示し、画像として保存すると
縦書きに清書されます。

尺八の楽譜には、主に琴古流(きんこりゅう)と都山流(とざんりゅう)の
2種類の流派のものが使われています。
どちらもよく似ていますが、使用する文字が違っている場合があったり、
表記が異なる場合があります。

琴古流の楽譜は江戸時代に成立し、古典曲などに使用されています。
都山流は、明治時代に琴古流と西洋音楽の楽譜を元に作られたもので、
西洋音楽の影響を強く受けています。
明治時代以降に採譜された民謡や、比較的新しい曲では
都山流の方が主流となっています。

和楽一筋では、この2種類の楽譜の両方に対応しており、
簡単に流派の切り替えができます。
好きな方の流派で楽譜を入力した後、もう一方の流派の表記に
一瞬で切り替えができます。

琴古流には西洋音楽の「小節」にあたる概念がありません。
あえて言うなら全部の曲が4分の2拍子です。
そのため、和楽一筋の編集画面でも小節を区切る線は表示されません。
琴古流の場合、リズムを表す「間拍子(まびょうし)」と呼ばれる点を
音符の周りに書きます。
和楽一筋では、間拍子は自動的に表示されるので、特別な操作は不要です。

都山流では小節の概念が取り入れられており、西洋音楽を知っていれば
割とすぐに理解できると思います。間拍子はありません。

また、琴古流では音符の上、都山流では音符の横に線を引いて、
音の長さを表します。

尺八は、息の吹き方によってオクターブを変えることができます。
低い順に「呂音(りょおん)」「甲音(かんおん)」「大甲音」となっています。
「呂音」は「乙音(おつおん)」と呼ばれることもあります。
また、息を吹く角度を微妙に調節することによって、半音上げたり下げたり
することができます。
半音上げる動作を「カリ」、半音下げる動作を「メリ」、
1音下げる動作を「大メリ」と言います。
和楽一筋では、音符を配置する時にこれらの設定をまとめて
行うことができます。

どの音符がどのような運指になるのかは決まっていますが、
民謡などでは独特の運指をする場合があります。
和楽一筋では、所定の運指にするか、独自に運指を指定するかを
自由に設定することができます。

尺八は、管の長さによって音階が変わってきます。
通常は一尺八寸管が使われます。
1寸長くなると音程は半音低くなるとされていますが、
実際には一尺八寸から離れるほど誤差が生じます。
和楽一筋では、音程を優先して名称を付けた管(正律管)で調律ができます。
そのため、名称と実際の長さが一致しないことがあります。
実際の長さを基準にして作った管を正寸管と言います。





























間拍子
間拍子
(左右の点)


篠笛

篠笛の楽譜には、様々な表記法があります。
縦書きと横書きの両方がありますし、音符に算用数字のみを使ったり
算用数字と漢数字を混合させて使ったりする場合もあります。
休符などの表記法にも何種類かあります。
和楽一筋では横書きとしています。
音符を算用数字のみとするか、算用数字と漢数字を混合させるかは、
自由に設定できます。

和楽一筋でも採用している横書き数字譜は明治時代に作られたもので、
やはり西洋音楽の影響を強く受けています。
#や♭など、西洋音楽の記号がそのまま使われています。
音符の下に線を引いて、音の長さを表します。
現在市販されている教本の多くでもこの記譜法が使われています。

篠笛も尺八と同様に息の吹き方でオクターブを変えることができます。
呼び方は尺八と同じです。
漢数字と算用数字を混合させる場合は、呂音を漢数字、甲音を算用数字で表し、
大甲音は算用数字の上に点を書きます。
算用数字のみの場合、呂音はそのまま数字で書き、甲音は数字の上に点をひとつ、
大甲音は数字の上に点をふたつ書きます。

篠笛も尺八と同様に運指の設定ができます。

篠笛も管の長さによって音階が変わってきます。
笛の基準音(運指1)の高さを「調子」といいます。
○本調子と表記します。これによって笛の音程がわかります。
六本調子〜八本調子の笛がよく使われます。



















呂音・甲音・大甲音
呂音・甲音・大甲音
(漢数字混じり)

呂音・甲音・大甲音
呂音・甲音・大甲音
(算用数字のみ)


三味線

三味線の楽譜には、文化譜、家庭式譜(地歌譜)など数多くの楽譜があります。
和楽一筋では、文化譜・家庭式譜・研精会譜・青柳譜に対応しています。

文化譜は、大正時代に四世杵家弥七師によって考案された楽譜で、
民謡や俗曲など様々な分野でよく使われています。
三味線譜としては、最も普及しています。
横書きの3本の線の上に、指で押さえる場所(勘所)を
算用数字で書いていきます。
0はどこも押さえない開放弦です。
数字の下に線を引いて長さを表します。
ギターのタブ譜によく似ています。

家庭式譜は縦書き枠式とも呼ばれ、地歌等でよく使われています。
明治時代に初代坂本五郎師によって考案された楽譜で、箏との合奏に向いています。
縦書きの枠の中に、漢数字や算用数字で勘所を書いていきます。
枠の大きさが長さを表します。
1が開放弦になります。

研精会譜は大正時代に吉住小十郎師によって考案された楽譜で、長唄等でよく使われています。
西洋音階のドレミファソラシをそのまま数字に置き換えたものです。
縦書きとなります。
文化譜と家庭式譜が勘所譜(ポジション譜)であるのに対し、
研精会譜は音階譜であるので、
調律を変えても譜面を修正する必要がない特徴があります。
ただし和楽一筋では、互換性のため音階を勘所に置き換えて
記録しているので、修正する必要があります。ご了承ください。

研精会譜は、糸の区別がわかりにくいという重大な欠点があります。
それを改良して作られたのが青柳譜です。
初代杵屋弥之介師によって考案された楽譜で、
文化譜のように三本の線を引き、その上に数字を書きます。
その他の表記法は研精会譜と同様となります。

和楽一筋では、これらの楽譜の切り替えが簡単にできます。

三味線には三本の糸があり、手前から一の糸・二の糸・三の糸です。
三の糸が一番高い音になります。

和楽一筋では、以下の奏法記号を記述できます。

ハジキ
指で糸をはじく動作です。
文化譜は「ハ」、家庭式譜は「∧」、研精会譜・青柳譜は「∩」と表記します。

ウチ
指で糸をたたいて音を出す動作です。
文化譜・家庭式譜では「ウ」と表記します。

スリ・コキ
ある勘所から別の勘所へ指を滑らせて音程を変える動作です。
スリ、コキのどちらも基本的に同じ動作ですが、
流派や団体によっては使い分けられているようです。
文化譜は「スリ」「コキ」、家庭式譜は「スリ」と表記します。

スクイ
バチで糸をすくい上げて音を出す動作です。
文化譜・家庭式譜は「ス」、研精会譜・青柳譜は「∨」と表記します。

オシ
バチを上の糸から下の糸に押し付けるように滑らせる動作です。
文化譜では「オシ」と表記します。

前撥/後撥
津軽三味線で用いられる奏法で、撥(バチ)を前後に動かして音の強弱・リズムをつけます。
和楽一筋では、後撥の場合に音符を緑色で表記します。
(家庭式譜では、この設定は無視されます。)

同じ動作でも、流派や団体によって名称が異なる場合があります。
また、上記以外にもいろいろな奏法記号が使われています。

人差指・中指・薬指のどれを使うかを表す指記号もあります。
文化譜はT・U・V、家庭式譜は人・中・工、
研精会譜・青柳譜は一・二・三と記述します。

調律は、一の糸を基準として他の糸の音程との相対的な関係で決めます。
(二の糸を基準とする場合もあります。)




文化譜
文化譜

家庭式譜
家庭式譜

研精会譜
研精会譜

青柳譜
青柳譜


箏の楽譜にも様々な種類があります。
和楽一筋が対応している家庭式譜は縦書き枠式とも呼ばれ、
明治時代に初代坂本五郎師によって考案された楽譜です。
縦書きの枠の中に糸の番号や奏法記号、歌詞などを書き込んでいきます。

和楽一筋では、十三絃箏と十七絃箏に対応しています。
十三絃箏は、文字通り糸は13本あります。
演奏する反対側から数えて1本目から10本目まではそれぞれ「一」〜「十」と表記し、
11本目は「斗(と)」、12本目は「為(い)」、13本目は「巾(きん)」と表記します。
十七絃箏は糸が17本あります。
1本目から10本目までは十三絃と同様に「一」〜「十」と表記し、
11本目以降は「1」〜「7」と表記します。

通常は右手で演奏し、左手で音色を変えたりします。

奏法記号のうち、和楽一筋で記述できるものには以下があります。

スクイ爪
親指の爪の裏側で、弾くときとは反対に糸の向こう側より
手前上方にすくい上げるようにして音を出す動作です。
「ス」と表記します。

後押(あとおし)
絃を弾いたのち、左手で絃を押して余韻の音高を高くする動作です。
「オ」と表記します。

押放(おしはなし)
弾いた後絃を押すのは上と同じですが、次の絃を弾く前に放します。
手を放すことにより、余韻の音が自然に開放絃の高さまで戻ります。
「ハ」と表記します。

突色(つきいろ)
弾いた直後に押し、すぐにすばやく手を放します。
絃の張力の跳ね戻りを利用して音色を変えます。
「ツ」と表記します。

引色(ひきいろ)
箏柱の左側近くの糸を親指・人差指・中指の3本をあてて持ち上げ、
右側の方へ絃を戻すように引っ張って絃の張力を下げ音高を下げる動作です。
「ヒ」と表記します。

揺色(ゆりいろ)
弾いた後左手の人差指・中指で絃をゆり動かして響かせる動作です。
「ユ」と表記します。

消爪(けしづめ)
箏柱の右側近くで、絃の下から親指か人差指の爪を
かすかに絃に触れさせて弾く動作です。
「ケ」と表記します。

散爪(ちらしづめ)
人差指の爪の右端で1本の絃をすばやく擦る動作です。
通常は右から左へ擦ります。
数字の下に矢印を表記します。

擦爪(すりづめ)
互いに隣り合った2本の絃を人差指と中指の爪の裏で
右から左へこすり、少し間をおいて右へ戻す動作です。
散爪に似ていますが、散爪ほど速くなく、絃より離れません。
数字の上に矢印を表記します。

輪連(われん)
中指の爪の右端を下にして一の絃を右から左へ擦り、
終わりになるにつれて爪を上方へ浮かせ、二の絃に移って
終わる動作です。
矢印を表記します。

裏連(うられん)
人差指を向こうへ倒し、爪の裏で絃を垂直に擦って、
高音から低音へ(手前から向こうへ)流し、最後の
数本手前から親指に変えて終わる動作です。
数字の下に、音符の長さの分だけ波線を引いて表記します。

流爪(ながしづめ)
親指の爪の表で高音から低音へ順次弾いていく動作です。
数字の下に波線を引いて表記します。

引連(ひきれん)
裏連とは逆に、中指の背を使って低音から高音へ
(向こうから手前へ)滑らせる動作です。
数字の下に波線を引いて表記します。

押手(おしで)
絃を右手で弾く前に、箏柱の左側を左手で下へ押して絃の張力を高めて、
音高を高くする動作です。
ヲ … 半音上げ
オ … 一音上げ
オ’ … 一音半上げ
という表記を糸番号の左に書きます。

箏には上記以外にも様々な奏法があります。
必要な場合は、画像に保存した後直接書き込んでください。

また、リズムを覚えるための口文句を「唱歌」と呼びます。

和楽一筋では、ソフトウェア設定で「題名」「著者情報」「テンポ」などを
全て省略して画像に保存すると、家庭式譜で標準的な縦16マス×横8マスで出力されます。
省略しない場合は、1行分を使用して表記されます。


大正琴

大正琴は、大正時代に発明された和楽器です。
左手で鍵盤を押さえ、右手のピックで絃を弾いて音を出します。
楽譜は横書きの数字譜を用います。見た目は篠笛の楽譜によく似ています。
押さえる鍵盤を数字で表したものです。
数字の下に線を引いて長さを表します。

また、どの指を使うかを漢数字で表した指記号や、
絃の弾き方を記号で示した奏法記号があります。
和楽一筋では、以下の奏法記号を記述できます。

向こう弾き
手前から向こう側に右手を動かす動作です。

返し弾き
向こう側から手前に右手を動かす動作です。

流派や団体によって、表記が異なる場合があります。


沖縄三線

沖縄三線(さんしん)の楽譜は「工工四(くんくんしー)」と呼ばれます。
縦書きの枠の中に勘所を表す漢字や奏法記号を書き込んでいきます。

勘所は、三味線と違い、固有の漢字で表します。
「工」「四」「合」などを使います。

和楽一筋では、以下の奏法記号を記述できます。

打音(うちうとぅ)
絃を弾かずに左手で絃を押さえるだけにします。
三味線の「ウチ」に相当します。
漢字の右上に点を書いて表します。

掛音(かちうとぅ)
爪の裏側で、絃の下から上へ引っ掛けるように弾きます。
三味線の「スクイ」に相当します。
漢字の右上に¬と書きます。

調律は、三味線とほとんど同じです。





工工四
工工四


和太鼓

和太鼓の楽譜は全く統一されていません。
そのため、各団体ごとに任意の記法が用いられています。
西洋の五線譜を少し改造した記法が最も一般的と思われます。

和楽一筋では、和太鼓の教本等を参考にし、
最も広く使われていると思われる西洋譜による譜面を採用しています。
音符や休符などは西洋の五線譜と同じですが、線は5本ではなく1本で、
線の上が「右手のバチでたたく」、線の下が「左手のバチでたたく」ことを意味します。

また、音符の符頭(黒丸の部分)を×印で表したものは、
和太鼓のフチをたたく動作を意味します。
(shiftキーを押しながら譜面をクリックすると、×印の音符を設置できます。)


トップページへ戻る